3Dクラウドボイス

3Dプリントパーツを使ったプロダクトを個人開発しました。

はじめまして、七海乃音と申します。

 

2020年12月〜2021年1月にクラウドファンディングで支援を募集し販売した、3Dプリント部品を用いたプロダクトとその開発過程をご紹介させていただければ思います。
このプロダクトは、試作開発を自宅の3Dプリンタ、量産をDMMのプリントサービスを使い、企画・設計・量産をひとりで行った個人プロジェクトです。
現在はクラウドファンディングは終了しましたが、少数ですがboothにて余剰在庫分ご用意しておりますので、ご希望の方はこちらからお求めください。

 

 

写真の品質を向上するカメラアクセサリー

これは、一眼カメラに取り付けるだけで、スタジオ撮影のような品質の(やや)高い写真が撮れるアイテムです。
具体的には、写真の仕上がりを大きく左右するライティング(照明のコントロール)をするための照明機材です。

 

通常、一眼カメラではエントリーモデルにのみ内蔵フラッシュが搭載され、上位機種には外付けフラッシュなどの外部の機器に頼ります。
(内蔵フラッシュでは、フラッシュの能力としては非力なため、上位機種には初めから能力の高い外部機器を使う想定であると推察されます。)

 

しかし、やはり通常の内蔵フラッシュの使い方では、フラッシュを直接被写体に当ててしまうためあまり品質の良い写真にはなりにくい。
そこでその課題を解決すべく、内蔵フラッシュに拡散/反射板を取り付け、ディフューザーとリフレクターの機能を与えればエントリーモデルでもワンランク上の写真が撮影できてしまうという代物です。

 

そしてこの拡散/反射版は、被写体の瞳に生き生きとした光を灯すキャッチライトをいれる効果もあります。

 

それが、「レフとデフ 3 in 1 Lighting Extension」です。

 

 

 

さらに機能面や特徴など詳しいことは、こちらの記事をご覧ください。
また、作例と撮影のコツは、こちらの記事にまとめてありますので、合わせてご覧いただければと思います。

 

3Dプリント製品の開発過程

当記事では主に、開発過程をご紹介したいと思います。
(それとは別に、どのような試作を経たかという切り口での記事がありますので、こちらをご覧ください。)

 

主な流れは、

 

1.機能要件・設計要件を設定
2.初期の効果検証
3.試作をCADで設計
4.自宅の3Dプリンタで出力して組み立て
5.1を満たせるまで、4-5を繰り返す。
6.量産に向けて設計など調整(部品選定や設計の調整、試験など)
7.量産(部品の調達、加工、組み立て)
8.検品
9.出荷

 

というような感じで行いました。
書き出すときちんとしているようですが、自身のプロダクトを作っている方はおそらく似たような手順を踏んでいるかと思います。
(むしろ自分の場合はちゃんと検証せずに作り出してしまうので、このプロジェクトではそこを気をつけました。)

 

すべて詳細にご紹介する事は難しいので、主なポイントをピックアップするにとどめたいと思います。

 

開発のきっかけ

一眼カメラ(自分の所有するSONY α6400)の内蔵フラッシュを利用して、ライティングを加えたワンランク上の写真を撮りたい。というのが今回の開発のきっかけです。

 

機能要件・設計要件

機能要件:内蔵フラッシュから発光される光の一部を上方に反射、残りを拡散させる。
設計要件:機能要件を満たす拡散板をα6400内蔵フラッシュの前に保持できる構造体。

 

効果検証

最初は、白いプラバンを内蔵フラッシュの前にかざして撮影し、効果を確認しました。
そこからCADで設計し、自宅の3Dプリンタで試作をはじめました。

 

量産のための設計

実ははじめから量産・販売を目論んでいたわけではなく、最初は単に自分用に作っているものでした。
しかし、検証での効果の高さと、量産が可能そうであると感じた頃から次第に販売を行おうと考えました。

 

試作の段階では自宅の3DプリンタでPLAで出力を行っていましたが、最終製品にはDMMの3Dプリントサービスでナイロン(ポリアミド)での出力を行いました。
ナイロンでの出力は、PLAやPETGなどを自宅の3Dプリンタよりも高精細(積層ピッチが小さい)事と、強度が得られる事から選びました。
またナイロンでのプリントは、SLSとMJFの方式がありますが、今回の製品が非常に小さな製品である事と、MJFの方が出力の精度(設計の再現度)が高いことからMJFを選択しました。

 

材料選択(PA11、PA12、PA12GB)については、実際に試作モデルを出力して想定通りに使えるかどうか、実使用をしながら決定しました。
PA11は軟質である事から最初に選択肢から外し、PA12とPA12GBについては試作モデルで比較したところ、PA12の方がガラスビーズが入っていない分若干柔らかく、PA12GBの方が実使用に耐えうると判断しPA12GBとしました。

 

FDMからMJFでの設計変更は今回の場合、Rの付け方やブリッジの部分などより設計の自由度が高くなる箇所がありました。
例えば、FDMではヒートベッドからRをつけてきれいにプリントする事は難しいですが、MJF(SLS)なら可能です。

 

 

(分かりやすく示すため、両モデルをスライサ上に並べて比較しています。)

 

ロゴプリント

量産を決めてから、より製品ぽくするために製品名を決め、ロゴを作り製品にプリントする事にしました。
ロゴも自分でデザインし、UVプリントで3Dプリントパーツに印字しました。
UVプリンタはファブ施設へ借りに行きました。

 

短い時間で効率的に、また正確にプリントを行うため、治具も作りました。

 

 

強度試験

量産・販売にあたり、簡易なものではありますが、強度試験も行いました。
レフとデフを両手でしっかり持って思いっきり力を加えて壊れないかどうかを試験しました。

 

 

パッケージ

専用にパッケージも作りました。
あまりコストをかけずに作らなければならないため豪華なパッケージにはできませんが、製品が届いたときに少しでも楽しんでいただけるようなパッケージを目指しました。

 

 

主なポイントとしては以上です。

 

販売方法と小さな挑戦

せっかく量産しても買っていただける方がいなければ在庫を余らせてしまいリスクになりますし、自分としては初めての試みとなるため、クラウドファンディングの方法をとりました。
All or Nothing方式で最低10個分の額が集まったら量産するというグループバイのような形を取ることで、そのリスクは回避しました。
反面、集まらなかった場合には販売する事自体叶いませんが、そこは挑戦することにし、写真系Blogに紹介していただくなど拙いながら営業活動にも力を入れました。

 

 

結果としては、支援金額のラインを152%で達成。無事に量産し、ご支援いただいた方に製品を出荷する事ができました。
その経緯や様子は、クラウドファンディングの活動報告のページ(リンク)を見ていただけると少し分かるかもしれません。

 

最後に

3Dプリント技術など個人の持てる技術の力を借りて、自分のプロダクトを持ち、販売するという小さな夢が少しだけ叶いました。
もし、他にも同じような目標や活動している方がいらっしゃればこのプロジェクトが参考になれば幸いです。

 

※各画像は、開発中のものを含みます。

 

投稿者 七海 乃音
プロフィール 七海乃音。工学修士。

いくつかの自主制作に取り組んでいます。試作や制作のために自宅に3Dプリンタも導入し、作品の公開や製品の販売に向けて活動中です。娘のためにおもちゃを作る事もしばしば。たまに絵も描く。

Twitter @hajikko_note
Note https://note.com/nanaminote
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